国の会議資料と意見公募中の改定案から、売り手・買い手・事業者に効く点を整理します。

「パワコンが壊れたら、同じものに替えればいい」。2027年からは、その“差し替え”に、サイバーセキュリティの条件が一つ加わる見通しです。

10月19日の経済産業省の会議資料と、11月6日まで意見公募中のガイドライン改定案をもとに、いまの発電所がどうなるのか、何をしておくとよいかを整理します。

この記事のポイント

何が起きたか──方針は決まり、ルールの文章はいま「案」

★1の機器を連系の条件にする方針は、2025年12月に決まっています。いまは、その方針を書き込む国のルール(資源エネルギー庁のガイドライン)の改定案が、10月6日から11月6日まで意見公募にかけられている段階です。年内を目途に改定され、各地の送配電会社も2026年度内に自社のルールを改める予定です(出典:資源エネルギー庁 電力SWG 第20回 資料3 2026年10月19日)。

2024年5月の遠隔監視機器への攻撃から、2025年12月の方針決定、2026年10月6日から11月6日の意見公募、年内のガイドライン改定予定、2027年4月1日の特高・高圧と2027年10月1日の低圧への適用開始までを、決まったことと案を色分けして並べた年表
図1:パワコンの新ルールは、いま「案」の段階。適用は2027年から(資源エネルギー庁 電力SWG 第20回 資料3〈2026年10月19日〉、系統連系技術要件ガイドライン改定案〈2026年10月6日 意見公募〉をもとに作成)

適用は、特別高圧・高圧が2027年4月1日、低圧が2027年10月1日から。その日以降に送配電会社が「契約申込み」を受け付けた案件が対象で、受付が済んだ案件にはさかのぼりません(出典:ガイドライン改定案 第1章5.)。

JC-STAR★1 とは何か、何ではないか

JC-STAR は、IoT機器のセキュリティを共通の物差しで評価してラベルで示す制度で、IPA(情報処理推進機構)が運営しています。★1〜★4のうち★1は全製品に共通する最低限の基準で、メーカー自身が適合を宣言する方式です(出典:IPA「JC-STAR 制度の詳細」)。

IPAの製品リスト(2026年10月15日更新)には371件が載っていて、すべて★1。うち「エネルギー関連機器(エネファーム、PCS、ガス給湯器など)」が163件です(出典:IPA「適合ラベル取得製品リスト」。件数は当社集計)。このラベルが「何ではないか」も押さえておきます。

観点★1 のラベルが示すこと示さないこと
基準全製品共通の最低限の基準(初期パスワードの扱い、ソフトウェア更新の仕組みなど)を満たすこと脆弱性が一つも無いこと。完全な安全の保証
確かめ方メーカーの自己適合宣言を IPA が形式確認し、登録番号と有効期間(原則2年)を公開第三者機関が評価した認証(第三者評価は★3以上)
範囲IP 通信機能を持つ機器のセキュリティ電気的な安全性・性能・発電効率。系統連系の保護装置の認証(JET 認証)は別の仕組み
電力分野太陽光・蓄電池の連系で求められる水準(2027年から・案)電力分野の脅威すべてへの対策。国は電力向けの★2以上を検討中
表1:JC-STAR★1 で分かること・分からないこと。出典:IPA「JC-STAR 制度の詳細」「適合ラベルの確認方法」、資源エネルギー庁 第19回グリッドコード検討会 資料6(2025年6月25日)、電力SWG 第19回 資料5(2026年2月12日)

いまの発電所はどうなるか──替えない限り、そのまま

国の資料の整理はこうです。機器を交換せずにそのまま使うなら、★1の機器への交換は求めない。FIPへの移行や卒FITも、設備の増設・変更を伴わなければ求めない(前掲 資料3 p.8)。

効いてくるのは「替える・足す」ときです。パワコン・遠隔監視装置・ゲートウェイといった IP 通信機能を持つ機器を交換・増設すると、その機器に★1が要ります。蓄電池を足すなら増設部分だけ、FIP転や卒FITに合わせてリパワリングやリプレースをするなら、更新する機器が対象です。

JC-STAR★1への交換が求められない場面(いまの機器をそのまま使う、FIP転・卒FIT、名義変更だけ=推定)と、その部分に★1の機器が要る場面(パワコン・遠隔監視装置の交換、蓄電池の増設、リパワリング・リプレース)を左右に分けて並べた図
図2:★1が要るのは「替える・足す」部分だけ。いまの機器はそのまま(資源エネルギー庁 電力SWG 第20回 資料3 p.8〜9、エネ庁「電力分野のサイバーセキュリティについて」FAQ〈2026年10月16日更新〉をもとに作成。名義変更だけの扱いは当社の推定)

売買(名義変更)だけの場合は、一次資料に直接の記述がありません。上の整理からは求められないと読めますが、これは当社の推定です。

替えるときに何が変わるか──「差し替え」が接続検討つきになる

資源エネルギー庁のFAQ(2026年10月16日更新)によると、新しい要件の下で既設の対象機器を交換する場合、接続検討の申込みが必要になります。同一機器への交換でも「軽微な変更」にはなりません。交換する機器が IP 通信機能を持つなら、★1の製品が原則です(出典:資源エネルギー庁「電力分野のサイバーセキュリティについて」)。

改定案では、低圧の交換・増設に効くのは2027年10月1日からと読めます。国のFAQや会議資料の交換の説明は「2027年4月以降、新しい要件の下で」という一般的な書き方で、低圧の日を個別には書いていません。この記事では「2027年(高圧4月・低圧10月)以降」と書いておきます。2027年に交換の予定がある方は、属地の送配電会社に確かめてください。

猶予の道──「過度な負担」なら、送配電会社と個別に協議

既設のオーナー向けの出口もあります。★1の機器に替えると互換性の問題で他の機器まで広く替えることになるなど、発電事業の継続に大きく響く「過度な負担」になる場合です。属地の送配電会社がそう認めれば、所定の様式で3点(図3)を出して協議し、了承を得れば、当面の間、★1の機器への交換が猶予されます(前掲 資料3 p.9、改定案 第1章5.(2))。

★1の機器では負担が大きい、属地の送配電会社に相談する、所定の様式で3点を出して協議する、了承を得れば当面の間猶予される、という4段階の流れを矢印でつないだ図
図3:交換が「過度な負担」なら、送配電会社と協議して当面の猶予(系統連系技術要件ガイドライン改定案 第1章5.(2)、資源エネルギー庁 電力SWG 第20回 資料3 p.9、エネ庁 FAQ をもとに作成。改定案の内容で、最終版で変わる可能性があります)

想定例には、2026年3月末までの延長保証や予備品を★1の機器に替えられない場合も挙がっています(前掲 FAQ)。

ここまでで分かったこと

売り手・買い手・事業者に、どう効くか(当社の考察)

売り手にとっては、買った後の交換・増設に条件が付く以上、機器の情報がそろっている発電所のほうが買い手に説明しやすくなります。売りに出す前に、次の記録をそろえておくことをおすすめします。

記録しておくもの何に効くか
パワコン・遠隔監視装置・ゲートウェイのメーカー・型番・設置年買い手が、交換時に★1の後継品があるかを調べられる
IP 通信機能の有無(遠隔監視の通信方式)新しい条件の対象かどうかの出発点
メーカー保証・延長保証の残りと契約日2026年3月末までに結んだ延長保証は、猶予の想定例に入る
予備品の有無と購入日2026年3月末までに買った予備品は、猶予の想定例に入る
遠隔監視の初期パスワード変更・ファームウェア更新の記録日々の対策の証明。2024年の事案は既知の脆弱性が突かれた
表2:売る前に記録しておく機器の情報(当社の整理)。猶予の想定例は資源エネルギー庁 FAQ(2026年10月16日更新)、2024年の事案は第20回グリッドコード検討会 資料4による

買い手は、確認項目にパワコンと遠隔監視装置の型番、IP 通信機能の有無を足してください。多くの既設品は IPA のリストに載っていませんが、それ自体は問題ではありません。見るのは、交換時に★1の後継品があるか、保証や予備品が猶予の想定例に当てはまるか、です。

事業者(O&M・EPC)にとって、基準は契約申込みの受付日です。2027年の春から秋に申込みが重なる案件は、どちらのルールかを工程表で確かめてください。現場で困る点は、11月6日まで意見として出せます。「JC-STAR適合予定」「取得申請中」などの表示は、仮登録番号がなければ不正な表記です(出典:IPA「適合ラベルの確認方法」)。

長い目で見ると──機器の記録が、発電所の説明材料になる(当社の考察)

低圧(50kW未満)には、これまで法令上、サイバーセキュリティに特化した明確な技術基準がありませんでした。今回の改定で、連系ルールの側から機器単位の水準が低圧にも入ります(出典:次世代電力系統WG 第13回 資料4 2026年10月6日)。

出発点は、2024年5月に遠隔監視機器約800台が攻撃を受け、不正送金の踏み台にされた国内の事案です(出典:第20回グリッドコード検討会 資料4 2025年12月16日)。中古の市場では、機器の情報と管理の記録が「安心して話を進められるか」を左右する材料になっていくと考えています。

手放すことを考えている方は、売りに出す前に表2の記録をそろえておいてください。名義変更の手続きは発電所を売ると決めたあと、そろえる記録の全体は点検の記録が値段を決めるで整理しています。買い手の方は、ソラコミュの掲載案件で機器の情報を見て、分からない点は問い合わせで確かめてください。ソラコミュでは、中古の発電所を売りたい方と買いたい方をマッチングしています。登録は無料です。

ソラコミュ(登録無料)はこちら

参考資料