第1回は収入の作られ方、第2回は手続きの順番を見てきました。最終回は「で、うちはやるべきなのか」です。制度の説明はできるだけ省いて、判断に使う問いだけを順番に並べます。

この記事のポイント

先に全体像──4つの問い

向き不向きは、発電所の性格で決まります。次の4つを上から順に考えると、自分の位置が見えてきます。

FIPに向くかを、エリア・時間でずらせるか・残りの年数・売り先と任せる相手の4つの問いで見ることを示した図
図1:FIPに向くかを見る4つの問い(資源エネルギー庁の資料をもとに作成)

1と2は「FIPにする意味があるか」、3と4は「FIPを続けられるか」の問いです。前の2つがそろわないと、切り替えの効き目は小さくなります。

問い1:エリアは、止められやすいか

まず前提の更新です。出力制御は一部のエリアに偏っていると言われてきましたが、国の資料では2026年度春は全エリアで出力制御が発生したと報告されています。夏の発電量の記事で「偏っている」と書いた点も、この春で状況が変わりました。

そのうえで、国は毎年度、エリアごとの出力制御の見通しを公表しています。今年8月の資料では、FIT/FIP全体の25%がFIPに移ったと仮定し、FITとFIPを分けた見通しも出しています。国自身が「発電事業者の事業性判断に柔軟に活用いただく」としている数字です。

エリア従来のルール順番変更後・FIT順番変更後・FIP
北海道43%53%3%
東北27%31%9%
東京3%3%1%
中部9%11%3%
北陸28%29%5%
関西8%9%4%
中国25%31%3%
四国10%13%2%
九州24%31%2%
沖縄0.26%1.39%0%
表1:2035年度の出力制御率の見通し(太陽光・無制限無補償ルールの発電所)。FIP欄は、FIP比率25%で、移行した太陽光に1kWあたり3kWhの蓄電池を併設したと仮定した試算。一般送配電事業者の試算値で、上限として保証されるものではありません。出典:資源エネルギー庁「再生可能エネルギー出力制御の長期見通し等について」(2026年8月6日)

読み方は単純です。北海道・東北・北陸・中国・九州では、FITのままだと約3割(北海道は5割超)が制御される見通しに対し、FIPは1桁台です。東京・中部・関西では、FITでも1割前後以下で、差は小さくなります。

表は「FITのままでも条件が悪くなる」ことも示しています。順番が変わると、FITの制御率は従来のルールより上がる見通しです(九州で24%→31%)。なお2035年度は、再エネの導入が今より大きく伸びた前提の試算です。数字そのものより、自分のエリアがどちらの側にあるかを見る使い方が安全です。

この見通しは、上限のない「無制限無補償ルール」の発電所が対象です。年間30日・360時間といった上限つきのルールで接続している発電所は、前提が違います。

国の指針では、FIP電源には無制限無補償ルールが適用されると書かれています。上限つきの発電所は、移ったときに上限がどう扱われるかを、切り替えの前に確かめておきたいところです。

問い2:電気を、時間でずらせるか

第1回で「順番が後ろになれば、止められる回数が減る」と書きました。ここに一つ補足が要ります。

FIPのプレミアムは、出力制御が起きている時間帯(市場価格が0.01円/kWhになるコマ)の電気には交付されません。止められずに発電できても、その時間の電気はほとんどお金になりません。

出力制御の時間帯に、FITは発電を止められて収入がなく、FIPで蓄電池がない場合は発電を続けても0.01円でプレミアムも出ず、蓄電池がある場合は別の時間に売って市場収入とプレミアムを得ることを比べた模式図
図2:出力制御の時間帯に起きること(資源エネルギー庁「FIT・FIP制度ガイドブック」、調達価格等算定委員会の意見などをもとに作成)

「止められにくい」をお金に変えるには、その時間の電気をためて、別の時間に売る手段が要ります。表1のFIP欄も、蓄電池の併設を前提にした試算です。順番の変更と蓄電池のどちらがどれだけ効いているかは、8月の審議会で委員から質問が出て、事務局が確認するとした段階です。

実務上の分かれ目は、蓄電池を置く場所があるかどうかです。国の審議会でも、現状の太陽光の大半は蓄電池を併設しておらず、設置スペースの確保が課題だという意見が出ています。

もう一つ、ルールの確認があります。2021年度以前にFIT認定を受けてFIPへ移った過積載の発電所が、パネルとパワコンの間に蓄電池を後から付けると、基準価格の一部が見直されます(過積載の程度に応じた加重平均の価格になります)。設計の段階で確かめておく点です。

ここまでで分かったこと

問い3:残りの年数に、余裕があるか

第2回で見たとおり、切り替えても期間は延びません。手続きには4か月以上を見ておく必要があり、蓄電池を付けるならその準備も要ります。残りの期間が短いほど、かけた手間と費用を取り戻す時間も短くなります。

単価も効きます。FIPの基準価格は、いまのFIT単価と同じです。単価が高い発電所ほど、止められる1kWh、ずらせた1kWhの重みが大きくなります。

問い4:売り先と、任せる相手がいるか

FIPでは、発電計画を自分で出す義務が生じます。実務ではアグリゲーターに委託するのが通常で、第2回で見たとおり、売り方が決まらないと申請の形も整いません。

小さな発電所では、ここが壁になりがちです。国の審議会では、50kW未満の小規模な発電所が売り先やアグリゲーターを見つけられるよう、環境を整える必要があるという意見が出ています。

一方で、第1回で見たとおり、太陽光の移行認定の7割近くは250kW未満の発電所です(2024年12月末時点)。規模だけで決めつけず、実際に引き受け手が見つかるかで判断するのが現実的です。

蓄電池のニュースは、どこでつながるか

最近、送電網に直接つなぐ系統用蓄電池の申込みの急増がニュースになっています。国の8月の資料では、2026年3月末時点で連系済みは約84万kW。これに対して接続検討の受付は約19,100万kW、契約申込みの受付は約3,500万kWです。

2026年3月末時点の系統用蓄電池は、接続検討の受付が約19,100万kW、契約申込みの受付が約3,500万kW、連系済みが約84万kWであることを示す横棒グラフ
図3:系統用蓄電池の申込みと、実際につながった量(資源エネルギー庁 2026年8月6日資料)

国は、確度の低い案件が枠だけを押さえる「空押さえ」への対策として、1事業者あたりの接続検討の申込数に上限を設けるなどの手を重ねています(背景は以前の記事で取り上げました)。

発電所オーナーにとっての意味は、出力制御の見通しは決まった数字ではないということです。国の試算でも、蓄電池で需要をつくる対策を置くと、出力制御率が下がる計算になっています。見通しは毎年度更新されるので、一度の数字で決め打ちせず、更新のたびに自分のエリアを見直すのが安全です。

まとめ:向く発電所・向かない発電所

問いFIPを具体的に検討しやすいFITのまま・売却とも比べたい
エリア出力制御の多いエリア(北海道・東北・北陸・中国・九州など)出力制御の少ないエリア(東京・中部・関西など)
時間でずらせるか蓄電池を置ける、売り先に工夫がある置く場所がない、ずらす手段がない
残りの年数・単価残りに余裕がある、単価が高い残りが短い
売り先・任せる相手引き受け手の目処がある見つからない、運用の手間をかけられない
表2:向く発電所・向かない発電所の目安。個別の判断は、契約の条件や設備の状態で変わります。出典:本文で挙げた資源エネルギー庁・調達価格等算定委員会の資料をもとに作成

連載のおわりに──3つを並べて比べる

FIPへの切り替えは、戻れない前提で考える判断です(第2回)。だからこそ「FIPにする」「FITのまま持つ」「売る」の3つを、同じ机の上に並べて比べるのがおすすめです。

表2で右の列に当てはまるものが多かった方は、FITのまま持つ場合の出力制御の見通しと、いま売った場合の価格を並べてみてください。ソラコミュでは、事業計画認定の設備IDから価格の目安をお出ししています。登録は無料で、いまβ版として運用しています。

連載の第1回FIPに変えると、収入はどう変わるのか、第2回FIPへの切り替えは、何から手をつけるのか、3つの出口の比較FIT残8年、売るか・持つか・FIP転換かもあわせてどうぞ。

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参考資料