前回は「収入がどう変わるか」を見ました。第2回は手続きの話です。どこに何を出すのか、どれくらい待つのか。自分でやるとしたら最初の一歩は何か、という順番で整理します。
この記事のポイント
- 切り替えは通常の変更届ではなく「変更認定申請」。FIP移行だけの専用様式(様式第4の2)がある
- 最初の一歩は書類づくりではなく「売り先を決めること」。売り方を証する書類が添付書類になる
- 認定まで3か月程度。そのあと広域機関への登録があり、そこで新しい設備IDを登録する
順番を先に見る──「国の認定」と「広域機関の登録」
FIPへの切り替えは、2つの機関にまたがります。ひとつは国(管轄の経済産業局)への変更認定申請。もうひとつは、電力広域的運営推進機関(以下、広域機関)へのシステム登録です。
国の認定を受けるとFIP設備になりますが、それだけではプレミアム(正式には供給促進交付金)は受け取れません。広域機関に事業者情報と設備情報を登録して、はじめて交付金の算定対象になります。前半だけで終わりではない、というのが最初の注意点です。

最初にやるのは、申請書づくりではない
認定を受けた事業計画を変更する手続きには、内容に応じて変更認定申請・事前変更届出・事後変更届出の区別があります。FIPへの移行で使うのは認定申請の系統で、しかも専用の様式が用意されています。資源エネルギー庁の様式一覧には、次の2つが並んでいます。
- 様式第3 再生可能エネルギー発電事業計画変更認定申請書(10kW未満・10kW以上50kW未満の太陽光発電及び市場取引等による供給事業を除く)
- 様式第4の2 再生可能エネルギー発電事業計画変更等認定申請書(市場取引等により供給する事業を行う場合に限る)
この「市場取引等により供給する事業」がFIPのことです。通常の変更で使う様式第3は、かっこ書きでこれを明確に外しています。FIP移行は別枠の様式、ということです。
そして、変更内容ごとの手続きをまとめた国の整理表では、「市場取引等により供給する方法」の変更に必要な添付書類として「市場取引等により供給する方法を証する書類」が挙げられています。どこに、どうやって売るのかが決まっていないと、申請の形が整いません。アグリゲーターや小売電気事業者との話を先に進めておく、というのが実務上の一歩目になります。
そろえるものと、アカウントの準備
| そろえるもの | 中身 |
|---|---|
| 売り先・売り方 | 「市場取引等により供給する方法を証する書類」が添付書類になる |
| GビズID | プライム又はメンバーのアカウント。電子申請のアカウントとは別に必要 |
| 電子申請のアカウント | 「再生可能エネルギー電子申請」にユーザ情報を登録してログインIDを取得 |
| 申請書と返信用封筒 | 出力した申請書を、管轄の経済産業局へ郵送する |
| 印鑑証明書 | GビズID認証を行う場合は省略可。代行を頼むなら委任状も |
見落としやすいのがGビズIDです。電子申請システムのアカウントとは別に必要で、取得そのものに日数がかかります。切り替えを検討し始めた時点で動かしておくと、あとで詰まりません。
もうひとつ、電子申請といってもオンラインだけでは完結しません。申請書を出力してGビズID認証を済ませ、送信したあとに、申請書と返信用封筒(切手を貼り、返送先の宛名・住所を記載したもの)を、発電設備の立地場所の都道府県を管轄する経済産業局へ送ります。認定されると、変更認定通知書が返ってきます。
代行を頼む場合は委任状と印鑑証明書が要ります。国のページには、業として他人の依頼を受け報酬を得て官公署に提出する書類を作成することは行政書士法違反になる、という注意書きもあります。誰に頼むかもあわせて確認しておくところです。
時間は「3か月+翌月」で見ておく
国のページには、申請してから認定まで3か月程度かかると書かれています(バイオマスは4か月程度。申請書類に不備がある場合を除く)。
そのあとに、もう一段あります。広域機関は月初に国の認定情報を取り込んで設備のデータベースを更新するため、システムに登録できるようになるのは「FIP認定を受けた月の翌月第2営業日以降」が目安とされています。広域機関のFAQには、N月10日に認定を受けた場合、N+1月の第2営業日から登録できる、という例が示されています。登録申請の審査にも一定の時間がかかります。

合わせると、申請から交付の土台が整うまで、4か月以上を見ておくのが現実的です。「来月から市場で売ろう」という話ではない、という感覚を持っておくと、計画が立てやすくなります。
切り替えると、設備IDが変わる
広域機関への登録では、「FIP設備としての新しい設備IDと受電地点特定番号」を入力します。FIPになると、設備IDは新しいものになるということです。
すでに廃棄等費用の積立てなどで広域機関に事業者情報を登録していれば、設備情報の変更登録で足ります。事業者としては登録済みでも今回の設備を登録していなければ追加(新規)登録、事業者情報そのものが未登録なら新規事業者としての登録からです。登録の際には印鑑証明書や受電地点特定番号が確認できる書面などが要り、交付金の受取口座もここで入力します。
設備IDは各種の手続きや価格の目安を出すときの起点になる番号なので、切り替えたあとは管理台帳や委託先に伝えている情報も更新しておくと、取り違えを防げます。
変わらないもの、戻せないもの
| 項目 | 切り替えでどうなるか |
|---|---|
| 設備ID | FIP設備としての新しい設備IDになる |
| 収入の受け取り方 | 市場取引や相対取引で自ら売り、プレミアムが1か月ごとに決まって交付される |
| 調達価格/基準価格 | 変わらない。整理表で「調達価格/基準価格が変わらない」変更に分類されている |
| 廃棄等費用の積立て | 枠組みは同じ(原則は外部積立て、調達期間/交付期間の終了前10年間)。ただしFIP認定事業で積立不足が出た場合は、1年程度分をまとめて積み立てる |
| 説明会・事前周知措置 | 実施が必要な「重要な事項の変更」の一覧に、この変更は挙げられていない |
| FITへ戻す手続き | 様式の一覧に、戻すための様式は見当たらない |
単価については、国の整理表で「市場取引等により供給する方法」の変更が「調達価格/基準価格が変わらないもの」に分類されています。制度設計の段階の資料でも、既認定が移行する場合は価格変更される事業計画の変更に該当せず、基準価格は調達価格と同水準、交付期間は調達期間の残存期間とする、と整理されていました。期間が延びる制度ではありません。
戻す方向については、様式の一覧にFIPからFITへ戻すための様式が見当たりません。制度設計の段階でも「FIP制度の新規認定/移行認定を受けた事業については、FIT制度への移行を認めないこととすべきではないか」とされていました。行きの経路だけが用意されている、という前提で判断するのが安全です。
自分の発電所は、そもそも対象か
2026年度にFIP制度が認められる対象は、原則50kW以上とされています。ただし事業用太陽光については「一定の条件を満たす場合には50kW未満であってもFIP制度が認められる」と明記されており、条件に当たるかどうかは案件ごとの確認になります。手続きの窓口も、50kW未満の太陽光と50kW以上とでは分かれています。
もうひとつ、混同しやすい点があります。事業用太陽光(地上設置)は、2027年度以降はFIT/FIP制度の新規認定の対象外になります。ただしこれは新規の話で、すでにFIT認定を受けた案件については、2027年度以降もFIP移行を認めることとしたと調達価格等算定委員会の意見に明記されています。いま持っている発電所の移行の道が閉じるわけではありません。
次回:FIPに向く発電所・向かない発電所
手続きの順番と時間が見えると、次に来るのは「で、うちはやるべきなのか」です。第3回は、向く発電所と向かない発電所を、エリアや規模、運用の体制から整理します。
収入の作られ方は第1回のFIPに変えると、収入はどう変わるのかにあります。戻れない前提で判断する以上、切り替える前に「いま売ったらいくらか」も並べておくと比べやすくなります。ソラコミュでは事業計画認定の設備IDから価格の目安をお出ししています。登録は無料で、いまβ版として運用しています。
