FITの残りが10年を切った発電所では、廃棄費用の積立がすでに始まっています。

電力会社からの入金が、売電量×買取価格より少ない。明細を見て、そう気づいた方もいるかもしれません。その差の正体の1つが「廃棄等費用積立金」です。発電所を将来片付けるための費用を、売電収入から前もって取り分けておく仕組みです。

この記事では、資源エネルギー庁の「廃棄等費用積立ガイドライン」と、国の調達価格等算定委員会の資料をもとに、いつから・いくら引かれるのか、発電所を売るときにどう考えるのかを整理します。

この記事のポイント

売電の入金から引かれている「廃棄等費用積立金」

FITの買取価格には、もともと発電所を片付ける費用(廃棄等費用)が織り込まれています。ただ、積み立てる額や時期を事業者に任せていたころは、実際に積み立てている事業者が少ない状況でした。そこで法改正で積立てが義務になり、2022年7月に制度が始まりました。

対象は、出力10kW以上のFIT・FIPの認定を受けた太陽光です。原則は「外部積立て」という方式で、FITでは電力会社が買取代金から積立金を差し引きます。給与から税金が引かれるのに似た、源泉徴収のような形です。この記事では、FITの発電所を前提に説明します。

電力会社が売電の代金から積立金を差し引き、残りの支払額を発電所のオーナーへ、積立金を電力広域的運営推進機関へ納める流れを示した模式図
図1:積立金は、売電の代金から先に引かれる(資源エネルギー庁「廃棄等費用積立ガイドライン」2026年4月改定をもとに作成。模式図)

差し引かれた積立金は、電力広域的運営推進機関(以下、広域機関)に納められ、発電所ごとに積み立てられます。電力会社からは毎月、代金・積立金・差し引いた支払額が通知されます。ガイドラインは、この通知を保管するよう求めています。積立金に利息はつきません。なお、国の要件を満たして認定を受けた事業者は、自社で積み立てる「内部積立て」を選ぶこともできます。

いつから引かれるか──買取期間が終わる10年前から

2022年7月は制度が始まった月で、すべての発電所がその月から引かれ始めたわけではありません。

積立ての期間は、調達期間が終わる日の10年前から、終わる日までです。調達期間は、基本的には運転開始から20年です。10年前の日以降、最初の検針日から引かれ始めます。

買取期間が2032年7月・2036年・2039年に終わる3つの発電所について、終わる前の10年間が積立期間になることを年表で示し、2026年10月時点の位置に線を引いた模式図
図2:積立は、買取期間が終わる前の10年間(資源エネルギー庁「廃棄等費用積立ガイドライン」、再エネ特措法施行規則第13条の4をもとに作成。模式図)

たとえば、調達期間が2032年7月に終わる発電所は、10年前がちょうど制度の始まりに重なり、2022年7月から積立てが始まりました。2036年に終わる発電所は2026年の同じ月ごろから、2039年に終わる発電所は2029年からです。

つまり、FITの残りが10年を切った発電所では、すでに引かれています。中古で買う側も、買う時点で積立期間に入っているかどうかで、買ったあとの手取りが変わります。

1kWhあたり、いくら引かれるか

毎月の積立金は、その月の売電量(kWh)に、1kWhあたりの積立額(解体等積立基準額)をかけた額です。この額は、発電所に適用されている買取価格ごとに国が決めています。

認定年度(目安)買取価格(1kWhあたり)積立額(1kWhあたり)買取価格に対する割合想定している廃棄費用(1kWあたり)
2012年度40円1.62円約4.1%1.7万円
2013年度36円1.40円約3.9%1.5万円
2014年度32円1.28円約4.0%1.5万円
2015年度29円・27円1.25円約4.3〜4.6%1.5万円
2016年度24円1.09円約4.5%1.3万円
2017年度21円0.99円約4.7%1.3万円
2018年度18円0.80円約4.4%1.2万円
2019年度14円0.66円約4.7%1.0万円
表1:買取価格ごとの、1kWhあたりの積立額(入札の対象外の案件)。認定年度は目安で、実際は適用されている買取価格で決まります。割合は買取価格と積立額から当社が計算したもの。2020年度以降の10〜50kWなど、割合がこれより高い区分もあります。出典:調達価格等算定委員会 第113回 資料2(2026年1月20日)

この表の価格では、積立額はどれも買取価格の約4〜5%です。認定を受けた年度ではなく、適用されている買取価格で決まります。

積立額は、国が想定した量を発電すれば、10年間で「想定している廃棄費用×認定出力」が積み上がるように決められています。たとえば36円・認定出力49.5kWの発電所なら、1.5万円×49.5kWで約74万円、月にならすと約6,200円が目安です。実際の額は毎月の売電量で変わり、発電量の多い月ほど多く引かれます。パネルを多めに載せた発電所では、これより多く積み上がります。

ここまでで分かったこと

売ると、積み上がった積立金はどうなるか

外部積立ての積立金は、売った人の手元には戻りません。ガイドラインは、認定事業者の地位を譲ると、積立金を取り戻せる地位が法律上自動的に買い手へ移るとしています(再エネ特措法第15条の15)。内部積立ての場合は自動では移らず、ガイドラインは扱いを譲渡の契約の中で合意しておくことが望ましいとしています。

積立金を取り戻せるのは、基礎・架台を含めて発電所を解体・撤去するときなど、ガイドラインで決められた場面に限られます。調達期間が終わっても、発電を続けているだけでは取り戻せません。

売る前に、積立がもう始まっているか、いくら積み上がっているかを確かめておきましょう。残高は、広域機関の「再エネ業務統合システム」に事業者登録すると確認できます(積立が始まる前の設備は登録できない場合があります)。ガイドラインは、譲るときは毎月の通知の内容を買い手に引き継ぐよう求めています。

名義変更の手続きは発電所を売ると決めたあと──名義変更で「自動で移るもの」と、契約で決めておくもので、たたむ場合との比べ方は草刈りがしんどくなった発電所を、たたむか、売るかで整理しています。

売値・利回りは「天引き後の手取り」でそろえて見る

中古の発電所は、年間の売電収入をもとに利回りを示すことがよくあります。積立期間中の発電所では、積立金を引く前の代金で見るか、引いた後の手取りで見るかで、収入の数字が約4〜5%変わり、利回りも同じ割合で下がります(表面10%なら約9.5%)。

売電の代金をそのまま見る場合と、積立金を引いた手取りで見る場合を2本の棒で並べ、天引き後でそろえて比べることを示した模式図
図3:同じ発電所でも、天引きの前か後かで数字が変わる(調達価格等算定委員会 第113回 資料2をもとに作成。模式図)

売り手は、売電の実績を出すときに、代金と支払額の両方を示しておくと、買い手と同じ物差しで話せます。買い手は、残りの調達期間のうち何年が積立期間に入るかを確かめ、天引き後の手取りで見込みを立てることになります。

積み上がった積立金は、将来の撤去費用の備えとして買い手に移ります。これを売値にどう反映するかは、設備の状態や撤去費用の見込みとあわせて、当事者どうしで話し合うことになります。積立金は国が想定した費用をもとにした額なので、実際の撤去費用は別に見積もっておくと安心です。積立金の会計や税務の扱いは、税理士に確かめてください。

売る前に、手元で確かめておくこと

このほかにそろえておく書類や記録は、中古の太陽光発電所が増えるほど、点検の記録が値段を決めるでまとめています。

積立金は、売り手にとっては手元に戻らないお金、買い手にとっては撤去への備えです。同じ数字を両方から見ておくと、条件のすり合わせが進めやすくなります。ソラコミュでは、中古の発電所を売りたい方と買いたい方をマッチングしています。登録は無料です。

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参考資料