制度は静かに、でも確実に動き出した。あなたの発電所は、どの出口が向いているか

FIT(固定価格買取制度)の残り年数が、気づけば一桁になっていた——そんなオーナーは少なくありません。「まだ売電は続くから、当面はこのまま」。その”なんとなく”の判断が、これまでは正解でした。発電した電気は決まった単価で確実に買い取られ、大きく悩む必要がなかったからです。

ですが2026年7月、その前提を静かに揺らす制度改正が動き出しました。改正電気事業法が7月17日に成立し(出典:経済産業省Sustainable Japan)、あわせて発電を止める順番のルール——「優先給電ルール」も、これからFIT設備が先に制御される向きへと変わっていきます。派手なニュースではありません。でも、残FIT年数が短いオーナーにとっては、「持ち続ける/売る/作り変える」の判断材料が、この夏に一つ増えたということです。この記事では、制度変更を”あなたの発電所への影響”に翻訳したうえで、3つの出口を中立に並べます。断定はしません。判断の軸を、一緒に整理します。

今回のポイント

何が変わるのか──5つの制度変更を「あなたの発電所」に翻訳する

制度の条文をそのまま並べても、自分ごとになりません。この夏動いた5つを、発電所オーナー目線に置き換えます。

① 発電を止める「順番」が変わる(優先給電ルールの変更)
需給バランスのために発電を一時的に止めるのが「出力制御」です。これまで優先的に守られてきたFIT設備ですが、ルールが「FIT→FIP順」に変わることで、FIT設備のほうが先に制御を受ける構図に近づきます(出典:日経BPSOLAR JOURNAL)。実施は一斉ではなく地域ごとの段階実施で、東北・四国=2026年度末/九州・中部・北陸・関西・中国=2027年度当初/沖縄=2027年度中頃/北海道・東京=2027年度末の予定です。自分のエリアがいつ切り替わるかは、出口を考える時間軸に直結します。

② 出力制御そのものが増えている
2026年度の全国の出力制御量は、過去最大の約25.3億kWhになる見通しです。九州本土の再生可能エネルギー制御率は約6.9%の見通しとされます(出典:資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ 第6回資料)。①と重ねると、「制御される総量が増える」×「FIT設備が先に止められる」という二つの流れが、同じ方向を向いています。売電収入の”取りこぼし”が、じわりと効いてくる可能性があります。

③ 新しい野立ては、もう作れなくなる
地上設置の事業用太陽光は、2027年度以降、FIT/FIPの新規認定を受けられません。2026年度のFIT/FIP単価は地上設置10〜50kWで9.9円/kWh、再エネ賦課金は4.18円/kWhです(出典:調達価格等算定委員会 意見書/自社コラム「2027年、野立て太陽光は『卒業』か『締め出し』か」)。新規が生まれない一方で、あなたの発電所のように既に認定を受け稼働している設備は、市場全体として”もう作れない在庫”になっていきます。

④ 大規模開発のハードルも上がる
大規模太陽光の環境アセスメント(環境影響評価)の対象が拡大され、対象規模が15MW・20MWへと引き下げられます(2028年4月1日施行/出典:Sustainable Japan)。新規の大規模開発は手続き負担が増え、③と同じく「既認定案件の希少性が上がる」方向に働きます。

⑤ 安全性の底上げが法律に書き込まれた
改正電気事業法により、太陽電池発電設備等の安全性向上措置が法定化されました(前掲・経産省/Sustainable Japan)。設備の安全・保守が「努力目標」から「法律の要請」へと格上げされたということです。裏を返せば、点検・記録がきちんとしている発電所ほど、これからは評価されやすくなります。

まとめると、「持ち続けるコスト(制御・保守)は上がり、既認定の希少価値も上がる」という、一見あべこべな状況が同時に進んでいます。だからこそ、出口は一つに決めつけられません。

3つの出口を、中立に比べる

どれが正解ということはありません。物件の条件と、あなた自身の事情で変わります。向く人・注意点・数字を並べます。

① 持ち続ける

向く人:残FIT年数がまだ長い/出力制御を受けにくい地域/設備が健全でO&M(保守運用)が回っている発電所のオーナー。

注意点:上の①②の通り、これからはFIT設備が先に出力制御を受ける向きで、制御総量も増える見通しです。「これまで通り」が、これまで通りの収益とは限らない点は押さえておきたいところです。パワーコンディショナ(直流を交流に変える装置)は15年前後で更新時期を迎えるため、保有を続けるなら更新費用も織り込む必要があります。

数字の目安:残り売電収入は「FIT残年数 × 年間売電収入」で概算できます。ここから制御による減収と保守費を引いたものが、持ち続けた場合の実入りのイメージです。

② 売却する

向く人:維持管理が負担になってきた/相続・事業承継を控えている/高単価(40円・36円など)の残年数を”確定した価値”に換えたいオーナー。

注意点:査定額は物件ごとに大きくばらつきます。同じ出力でも数百万円変わることは珍しくありません。焦って安く手放す必要はない一方、③④の希少性は「今が売り手優位」という追い風でもあります。査定額が何で決まるかは、別稿「うちの発電所、いくらで売れる?──中古太陽光の査定額を決める5つの要素」で、①FIT残年数×単価 ②立地・出力制御 ③利回り相場 ④設備状態 ⑤土地の権利、の5点に分けて整理しています。

数字の目安:業界で一般に使われる簡易式は「売却価格 = FIT残年数 × 年間売電収入 ÷ 2」。あくまで概算で、上記5要素で上下します(保証はできません)。

③ FIP転換(+蓄電池)

向く人:出力制御を「損」で終わらせず、設備投資も含めて能動的に運用したいオーナー。FIP(市場価格に補助=プレミアムを上乗せする制度)に切り替えると、電気を高く売れる時間帯を狙う運用がしやすくなります。

注意点:市場価格に連動するぶん、収益の読みは固定買取より難しくなります。蓄電池の導入費用や運用の手間もかかります。全ての発電所に向くわけではありません。

数字の実証:鹿児島県の実証事例では、FIT継続時を100%として、FIP転換のみで105%、FIP転換+蓄電池併設で142%の収益(=約42%増)が報告されています(自社コラム「FIP転換と蓄電池併設で収益42%増を実現」)。あくまで一事例で、同じ結果を保証するものではありませんが、「制御される電気を、ためて売る」という発想が実用段階にあることを示しています。今回の優先給電ルール変更は、この③の選択肢の重みを増す方向の変化でもあります。

まず何から──「相場を知る」と「書類を揃える」

3つの出口のどれを選ぶにしても、最初の一歩は同じです。相場を知ることと、書類を揃えること

第一に、②の簡易式で自分の発電所のおおよその価格帯を掴みます。「売る」を選ばないとしても、”今の価値”が分からないままでは、持ち続ける・作り変えるの判断も宙に浮きます。相場は、すべての出口に共通する物差しです。

第二に、判断と交渉を支える書類——過去の売電実績、O&M履歴、パワコンの更新記録、土地の契約書、構造計算書——を手元に整えます。⑤の通り安全性が法定化された今、記録が揃っている発電所ほど、売るにしても持つにしても評価されやすくなります。点検や書類整備に手が回らない場合は、専門業者に頼るのも一手です。

出力制御の拡大も設備の経年も、こちらの都合を待ってはくれません。ですが、慌てて決める必要もありません。相場と書類さえ手元にあれば、「売るか・持つか・FIP転換か」は、落ち着いて選べます。

▼ソラコミュでできること

ソラコミュの中古売買は、事務局が仲介に入り、入札制で買い手を募る仕組みです。「うちはいくらになるのか」を知りたい段階からのご相談を承っています。発電所の情報(出力・FIT単価・立地・土地の権利形態)を登録いただければ、査定と相場感の確認から一緒に進められます。点検・書類整備といった維持管理のお困りごとは、お困り相談で専門業者を無料でご紹介します。「まだ売ると決めたわけではない」段階でも大丈夫です。売る・持つ・作り変える——どの出口が向いているか、一件一件、事務局が一緒に考えます。

まずは相場を確かめる一歩として、β版運用中のソラコミュ(https://dev.tsunagu-lab.com)をのぞいてみてください。

まとめ


参考資料