日射は一年でいちばん強いはずなのに、モニタの数字は5月より低い。この違和感の正体を、上から順に潰していきます。
「夏がピークではない」は、よくある話です
8月の検針票やモニタを見て、「去年より落ちている気がする」「5月のほうが多かった」と感じるオーナーの方は少なくありません。
最初にお伝えしておくと、日射量が最大の月と、発電量が最大の月は一致しないのが普通です。太陽電池は温度が上がると出力が下がる性質を持っているためで、真夏はその影響がいちばん大きく出ます。
とはいえ「夏だから仕方ない」で片付けてしまうと、直せるはずの不具合を見落とします。夏の発電量低下でまず疑うのは、次の3つです。
- パネルの温度上昇(設備は正常)
- 出力制御(設備は正常)
- 設備側の不具合(放置すると損失が積み上がる)
順番には意味があります。1と2は「正常なのに下がる」要因なので、先にここを外してから3を疑うほうが、無駄な調査費をかけずに済みます。
原因①:パネルの温度上昇
定格出力は「25℃」で測った値です
カタログに書かれている出力は、モジュール温度25℃・日射強度1,000W/m² という標準試験条件(STC)で測定された値です(産総研 太陽光発電研究センター)。
真夏の屋外は、この25℃から大きく離れます。黒いモジュールが直射日光を浴びれば、表面温度は気温をかなり上回ります。つまり夏場は、カタログの前提より不利な条件で運転していることになります。
温度係数は、お手元の仕様書に書いてあります
どれくらい下がるかは、モジュールの仕様書にある「最大出力温度係数(Pmax)」という項目で決まります。結晶シリコン系では −0.3〜−0.5%/℃ 前後の値が並ぶことが多いのですが、これはあくまで製品ごとの数字です。確定値ではないので、必ずお手元の仕様書でご確認ください。
たとえば温度係数が −0.4%/℃ のモジュールで、モジュール温度が25℃から60℃へ上がったとすると、35℃ぶんで出力は十数%下がる計算になります。これは故障ではなく、仕様どおりの挙動です。
温度が原因のときの「形」
温度が原因の場合、発電カーブには特徴が出ます。
- 朝夕はむしろきれいに出ているのに、気温が上がる日中にへこむ
- 雲がなく、風が弱い日ほど落ち込みが大きい
- 隣接する複数のストリングが、そろって同じように下がる
「一部だけ」ではなく「全体がそろって」下がるのが、温度要因のサインです。
原因②:出力制御
エリアによって、事情がまったく違います
出力制御(発電の一時停止)は、需要より供給が多くなりそうなときに送配電会社が要請するものです。重要なのは、全国一律の現象ではないという点です。制御は特定のエリアに偏って発生しており、九州・東北・北海道での実施が中心になっています。
再エネの出力制御をめぐる全国的な状況と抑制に向けた取り組みは、送配電網協議会の資料にまとまっています。
確認は「実績」を見るのが早いです
出力制御は各送配電会社が実施状況を公表しています。自分の発電所があるエリアの制御実績と、モニタで落ち込んでいる日時を突き合わせれば、それが制御によるものかどうかは、その場で判断できます。
制御による停止であれば、設備は正常です。ここで切り分けが終われば、点検を手配する必要はありません。
原因③:設備側の不具合
1と2を外してもまだ説明がつかない。あるいは「特定の一部分だけ」が落ちている。このときは設備を疑います。
「1本だけ落ちている」形かどうか
温度や出力制御が全体をそろって下げるのに対して、設備の不具合は偏って出ます。
- ストリング単位で1本だけ出力が低い、またはゼロ
- 特定のパワコンだけ停止・エラーを繰り返す
- 前年同月比で、ある時期を境に一段下がったまま戻らない
太陽光発電システムで実際に起きた不具合とその対処については、JPEA(太陽光発電協会)太陽光発電O&Mタスクフォースの「太陽光発電システムの不具合事例とその対処例」に事例がまとまっています。モジュール・接続箱・パワコン・ケーブルのどこで何が起きうるのかを把握しておくと、業者とのやり取りが早くなります。
草木の影と汚れは、自分でも確認できます
夏は雑草の伸びが早く、下段のモジュールに影がかかっていることがあります。影はその1枚だけの問題では終わらず、直列につながったストリング全体の出力を引き下げます。現地に行けるなら、まずは足元を見てください。除草や洗浄で戻るなら、いちばん安く済む原因です。
10kW以上50kW未満も、保安の対象です
「低圧だから点検義務はない」と思われている方がいますが、2023年3月20日から、10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備は「小規模事業用電気工作物」に位置づけられ、技術基準適合維持義務・使用前自己確認・基礎情報の届出が課されています(関東東北産業保安監督部東北支部)。
発電量の低下は、収益の話であると同時に、設備の状態を知らせるサインでもあります。放置してよい理由はありません。
切り分けの順番(まとめ)
- 1. 落ち込みは「全体そろって・日中だけ」か → そうなら温度要因の可能性が高い(費用ゼロ)
- 2. 送配電会社の出力制御実績と日時が一致するか → 一致すれば制御によるもの=設備は正常(費用ゼロ)
- 3. ストリングやパワコン単位で偏っていないか → 偏っていれば設備を疑う
- 4. 足元の雑草・パネルの汚れ・影 → 除草/洗浄で戻ることがある
1と2で説明がつくなら、費用はかかりません。3と4に進んで初めて、業者への相談を検討する段階になります。
「直しても戻らない」と分かったとき
点検の結果、機器の交換や大がかりな補修が必要だと分かることがあります。そのとき出てくるのが、修理費をかけて持ち続けるのか、別の道を選ぶのかという問いです。
判断材料は、だいたいこの3つに整理できます。
- 直して持ち続ける:残FIT年数のあいだに投じた費用を回収できるか
- 売る:現在の設備状態を前提に、いくらの目安がつくか
- たたむ:撤去・処分にいくらかかるか
このうち「たたむ」の費用については草刈りがしんどくなった発電所を、たたむか、売るかで、「売る」の値づけについてはうちの発電所、いくらで売れる?──中古太陽光の査定額を決める5つの要素で、それぞれ数字を並べています。制度の側から出口を考えたい方はFIT残8年、売るか・持つか・FIP転換かもあわせてどうぞ。
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