夏のこの時期、発電所のことを考えるきっかけは、たいてい売電収入の話ではありません。草が伸びる。業者の日程が合わない。パネルの汚れが気になるけれど、点検を誰に頼めばいいのか分からない。そういう小さな面倒が積み重なって、ふと「もう手放してもいいかもしれない」と思う。

そう思ったとき、多くの方が「たたむ(撤去して廃棄する)」ことを最初に考えます。ただ、たたむにもお金がかかります。しかも、そのお金は制度が変わる途中にあります。

この記事では、たたむ場合に実際に何にいくらかかるのか、積み立ててきたお金はどう扱われるのかを、公的資料の数字で整理します。そのうえで、売るという選択肢と並べて比べられる状態にすることを目指します。結論を押しつけるつもりはありません。数字を並べてから決める、というだけの話です。

選択肢は、だいたい4つ

FIT期間の途中、あるいは終盤に差しかかった発電所について、取りうる道はおおまかに4つです。

「持つか売るか」については以前、FIT残8年、売るか・持つか・FIP転換かという記事で整理しました。今回はそこで扱いきれなかった「たたむ」を、費用の面から見ていきます。

たたむと、いくらかかるのか

たたむ費用は、大きく2つに分かれます。設備を外して運び出す費用と、外したものを処分する費用です。

1. 撤去・解体の費用

パネル・架台・パワーコンディショナー・基礎(スクリューや杭)を外し、運び出す工事の費用です。

この部分については、公的な一次情報として確定した単価は存在しません。事業者各社が公開している目安として、野立ての産業用でおおむね2万円〜3万円/kW前後という数字が出ていますが、これは地盤の状態、パネルの枚数、搬出経路、フェンスや電気設備の有無で大きく変わります。50kWの発電所なら100万円〜150万円という桁になりますが、あくまで桁感であって、見積もりの代わりにはなりません。実際に検討される場合は、必ず現地を見たうえでの見積もりを取ってください。

2. 廃棄・リサイクルの費用

外したパネルをどう処分するかで、金額が変わります。環境省の太陽光パネルリサイクル制度に関する資料では、処分方法ごとの費用がこう整理されています。

4倍から6倍の開きがあります。この差こそが、いま制度が動いている理由そのものです。安いほうを選べば埋立地が埋まる。高いほうを選べば事業者の負担が重い。そのバランスをどう取るかが、後述する新しい法律の論点になっています。

3. すでに積み立てているお金があります

ここが見落とされやすいところです。

2022年7月から、10kW以上のFIT・FIP認定を受けたすべての太陽光発電事業を対象に、廃棄等費用の積立が義務づけられています(廃棄等費用積立制度)。原則として、売電収入から自動的に差し引かれる「源泉徴収的な外部積立て」という方式です。制度の詳細は電力広域的運営推進機関のページにまとまっています。

つまり、たたむときの費用の一部は、すでにあなたの名義で積み上がっているということです。まず確認すべきは、撤去業者の見積もりよりも先に「自分の設備にいくら積み上がっているか」かもしれません。

2026年の新しい法律は、何を変えるのか

2026年5月29日、太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律が成立し、6月5日に公布されました。施行は「公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。逆算すると、2027年12月までのどこかということになります。

現時点で分かっていることを、正確に書きます。

費用を負担するのは、実質的な排出事業者です。つまり、パネルを手放す側が負担するという整理になっています。

一方で、施行日からすべてのパネルに一律の義務がかかるわけではありません。リサイクル計画の届出や、それに対する勧告・命令が適用されるのは、政令で定める重量要件に該当する「多量事業用太陽電池廃棄者」です。低圧の発電所を1基だけお持ちの方が、施行と同時に届出義務を負う、という話ではありません。

そして肝心の重量要件も、リサイクルの具体的な基準も、まだ政省令待ちです。ここは決まっていない、というのが2026年8月時点の正確な状況です。

決まっていない以上、いま慌てて動く理由はありません。ただ、「たたむ費用は今後下がる方向には動きにくい」という向きだけは読めます。埋立から再資源化へ誘導する制度ですから、安いほうの選択肢は狭まっていきます。

売る場合、積み立てたお金はどうなるか

「たたむ費用がかかるなら、売ったほうがいいのでは」と考えたとき、必ず出てくる疑問がこれです。積み立ててきたお金は、自分に戻ってくるのか。それとも捨てることになるのか。

答えははっきりしています。資源エネルギー庁の再エネ特措法改正よくあるご質問によれば、外部積立てをしている設備について認定事業者の名義を変更した場合、積立金を取り戻せる地位は、法律上自動的に、変更後の認定事業者に移転します

つまり、売却すると積立金は買い手に引き継がれます。捨てることにはなりませんが、自分の手元に現金として戻ってくるわけでもありません。

だからこそ、売却価格の交渉では、すでに積み立てられている金額を確認して、価格に織り込むという考え方が要ります。買い手は将来の撤去費用としてそれを受け取るのですから、その分は価格に反映されてしかるべきものです。売買契約書に積立金の権利移転を明記しておくことも、後のトラブルを避けるうえで大切になります。

この点は、相手が提示した金額をそのまま受けるか、根拠を持って交渉できるかの分かれ目になります。

並べてみると、比べ方が変わります

ここまでの数字を並べ直してみます。50kWの野立てを例にした、あくまで桁感です。

たたむ場合

売る場合

たたむ側は出ていくお金、売る側は入ってくるお金です。同じ「手放す」でも、符号が逆です。

もちろん、土地を自分で使いたい、隣地との関係で更地にしたい、といった事情があれば、たたむことに十分な理由があります。お金だけの話ではありません。ただ、お金の話をお金の話として先に見ておくと、他の事情を落ち着いて考えられます

まず、数字だけ見てみる

たたむ側の数字は、現地を見た見積もりでないと分かりません。時間もかかります。

一方で、売る側の数字は、先に目安を見ることができます

ソラコミュでは、経済産業省の事業計画認定設備IDを入力していただくと、設備情報が自動で取り込まれ、発電量・FIT単価・残存年数から価格の目安が算出されます。書類を探して転記する作業は要りません。登録は無料で、いま中古の設備が210件掲載されています(2026年8月現在)。

売ると決めてから使うものではありません。「たたむといくらかかるのか」を業者に聞く前に、「売るとどのくらいなのか」を先に見ておく、という使い方で十分です。片方の数字だけで決めると、たいてい後悔します。

また、草刈りや点検の相談先が見つからないだけで「もう限界だ」と感じておられるなら、手放す前にできることもあります。ソラコミュのお困り相談では、除草・点検などの業者を無料でご紹介しています。たたむ・売るの前に、持ち方を変えるだけで済む場合もあります。

数字を並べたうえで「やっぱり持ち続ける」という結論になるなら、それがいちばん良い結論です。私たちがお手伝いできるのは、その判断材料をそろえるところまでです。

ソラコミュはβ版運用中です。設備の登録・閲覧は無料でお使いいただけます。https://dev.tsunagu-lab.com

なお、9月9日(水)から11日(金)まで幕張メッセで開かれるPV EXPO【秋】に出展します(小間E15-33)。設備IDをお持ちいただければ、その場で価格の目安をお出しします。詳しくは出展のお知らせをご覧ください。

参考資料