買取価格が「上がった」異例の年。その理由を、資材・工事・接続の3つに分けて読む

FIT(固定価格買取制度)の買取価格は、毎年少しずつ下がっていくもの——長くそう受け止められてきました。ところが2026年度は、事業用太陽光(地上設置)の一部区分で価格が引き上げられています。パネルは安くなり続けているはずなのに、なぜ買取価格を上げる必要があったのか。この「ねじれ」の中に、これから設備を導入する事業者にとっても、すでに発電所をお持ちのオーナーにとっても、見過ごせない事情が隠れています。

今回のポイント

2026年度、買取価格は「上がった」

経済産業省は2026年3月19日、2026年度以降のFIT/FIP買取価格と2026年度の再エネ賦課金単価を公表しました。事業用太陽光(地上設置)については、50kW以上の区分が8.9円/kWhから9.6円/kWhへ引き上げられています。入札対象となる250kW以上も、2025年度の入札上限価格(8.90〜8.68円/kWh)から引き上げられ、2026年度の入札では一律9.60円/kWhに設定されました(出典:新電力ネット「2026年度以降のFIT動向を解析」経済産業省 2026年3月19日プレスリリース)。

FITの買取価格は、感覚や交渉で決まるものではありません。「標準的な事業者が想定される費用で設備を建てたとき、適正な利潤を得られる水準」を、調達価格等算定委員会が費用データから逆算して決めています。だからこの制度では、買取価格の動きは建設コストの動きを映す鏡になります。

そう考えると、2026年度の引き上げが意味することは一つです。想定される建設コストが、下がらなかった。少なくとも、価格を据え置けるほどには下がらなかった、ということです。

上がったのは「土地造成費と接続費」

引き上げの理由として説明されているのは、土地造成費や接続費の上昇などを総合的に判断したためとされています(前掲・新電力ネット)。ここが今回いちばん大事なところです。

太陽光発電所を1基つくるとき、お金は大きく3か所に流れます。

このうち資材、とくにパネルの単価は長期的に下がってきました。一方で上がっているとされたのは、造成と接続です。つまり「パネルが安くなったのだから発電所も安くなるはず」という直感は、もう半分しか当たりません。安くなった部分の値下がりを、工事側の値上がりが打ち消している構図です。

3つのうち、買い方で動かせるのはどれか

① 工事・造成 —— 現地の条件でほぼ決まる

山を削るのか、平地に置くのか。搬入路はあるのか。地盤は締まっているのか。造成費は土地の顔つきで決まってしまう部分が大きく、発注のしかたを変えても劇的には動きません。人件費の上昇圧力も続いています。ここは「安くする」より「そもそも造成の少ない土地を選ぶ」で効かせる領域です。

② 接続 —— 系統側の事情で決まる

連系工事の負担金は、その地点の系統に空きがあるかどうかで大きく変わります。事業者側の努力で下げるというより、立地選定の段階で織り込むしかない費用です。近年は出力制御の広がりもあり、「つなげるか」だけでなく「つないだあと、どれだけ発電できるか」まで見る必要が出てきました(あわせてお読みください:FIT残8年、売るか・持つか・FIP転換か)。

③ 資材 —— ここだけは「買い方」が効く

残るのが資材です。パネルもパワコンも架台も、同じ製品を、同じ時期に、まとまった数量で買うほど単価が下がるのが基本の構造です。メーカーや商社にとって、1枚を100件に売るより100枚を1件に売るほうが、営業・与信・物流のコストが少なくて済むからです。

ところがこの「まとまった数量」が、小規模な事業者や1基ずつ増設していくオーナーにはつくれません。年に1〜2件しか建てない事業者が、大手EPCと同じロット価格を引き出すのは現実には難しい。下がる余地があるのに、下げる立場に立てない——これが小規模事業者の置かれている状況です。

そこで「共同調達(まとめ買い)」という選択肢

発想はシンプルです。一人では届かないロットを、複数の事業者で持ち寄って一つの発注にまとめる。1件あたりの必要枚数は変わらないまま、交渉のテーブルに載る数量だけが大きくなります。

ソラコミュの「シェア購入」は、この仕組みを小さく試せるようにしたものです。ロット単位で参加できるので、「今回はパワコンだけ」「架台だけ」といった部分参加もできます。事務局が間に入って取りまとめるため、参加者同士で発注や支払いの調整をする必要はありません。

正直にお伝えしておきたいこと

ただし、まとめ買いは万能ではありません。次のような場合は、効果が出にくいか、かえって手間になります。

逆に向いているのは、時期にある程度の幅があり、汎用品でよく、複数基をまとめて計画しているような場合です。ご自身の案件がどちらに近いか、迷ったらご相談ください。「今回は見送り」という結論でもかまいません。

すでに発電所をお持ちの方にとっての意味

ここまでは主に「これから建てる側」の話でした。では、すでに稼働している発電所のオーナーにとって、この話はどう効くのでしょうか。

ポイントは、新しく建てるコストが下がらないということは、すでに動いている発電所の相対的な価値が保たれやすいということです。しかも2027年度より、地上設置は原則としてFIT/FIPの支援対象外になる方針が示されています(前掲・新電力ネット/関連記事:2027年、野立て太陽光は「卒業」か「締め出し」か)。新しい野立て案件が生まれにくくなる一方で、建設コストも下げ止まっている。この二つが重なると、稼働済み・既認定の発電所を「買って手に入れる」動きに向かいやすくなります。

もちろん、これは見通しであって保証ではありません。出力制御の広がりや、2026年度の再エネ賦課金が4.18円/kWhと高止まりしていること(関連記事:再エネ賦課金、初の4円台突入)など、逆向きに効く要素もあります。ただ「持ち続けるか、売るか」を考えるうえで、新設コストの下げ止まりは、判断材料の一つとして知っておく価値があると考えています。

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まとめ

参考資料