「うちの発電所は、届出の対象になるのか」。その目安が、数字で出ました。
10月30日、国の検討会に、パネルを廃棄するときの「多量」の線引きの事務局案が示されました。50トン以上、1kWあたり80kgの換算で625kW相当からです。決まったわけではありません。案の読み方と、いまのうちにできることを整理します。
この記事のポイント
- 「多量」を50トン以上とする事務局案が出ました。625kW相当は換算で、線は重さの案です。パネルの重さや枚数で前後します。
- 低圧1か所(49.5kW)は約4トン(当社計算)で届きません。ただし売電していれば、国の判断基準と指導・助言の対象です。何か所も持つ場合の数え方は、資料に明記がありません。
- いまできるのは3つ。パネルの総重量を出す、出口の見積にリサイクルの行を足す、両面ガラスなら処理先を確かめる、です。
何が起きたか──線引きの「案」に、数字が出た
法律(太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律)は、2026年5月29日に成立し、6月5日に公布されました。いまは施行前で、施行は2027年秋〜冬頃の予定です(出典:合同会議 第11回 資料1 p.1 2026年10月、検討会 参考資料2 2026年10月30日)。どれだけ廃棄すれば「多量」かは政令に任されていて、その案が今回出ました。
案の柱は3つです(出典:環境省 検討会 第1回 資料3 2026年10月30日)。文末はどれも「〜としてはどうか」です。会議のページに議事録は11月2日時点で載っておらず、委員の反応は確かめられていません。
- 多量の線:50トン以上(p.11)
- 対象のパネル:1枚3.7kg以上。一般的なパネルはほぼ入ります(p.3)
- 種類:一般的なシリコン系と、薄膜の一部(CIS/CIGS・CdTe)は含める案です。ペロブスカイトと、ガラス繊維を使う曲がるパネルは、いまは含めない案です(p.4〜5)
規模に置き換えると、図1のようになります。

なぜ50トンか──線を動かしても、量はほとんど動かない
資料は40・50・60トンの3つを比べています。
| 線 | 届出の最大見込み | うち600kW以下 | 2027〜2050年の排出に占める割合 | 1MWで線に届く機種 |
|---|---|---|---|---|
| 40トン | 8,368者 | 1,263件 | 38.7% | 99.3% |
| 50トン(案) | 7,398者 | 0件 | 38.3% | 94.9% |
| 60トン | 6,784者 | 0件 | 37.9% | 72.2% |
線を40から60トンまで動かしても、カバーする量は1ポイントも変わりません。変わるのは届出をする人の数と顔ぶれです。40トンなら600kW以下が1,263件入り、60トンなら1MWで届かない機種が3割近くになる。その間が50トンの案です。
「600kW以下は0件」の読み方には注意が要ります。600kW×80kg=48トン(当社計算)なので、換算の上では当然そうなる数字です。資料も、過積載(パワコンより多くパネルを載せること)や設置年代は反映しない概算だと注記しています。
1MWあたり100トン以上の機種も16.4%あり(p.8)、その重さなら500kWで50トンです(当社計算)。重い機種のほか、認定の出力より多くパネルを載せている場合も同じです(たとえばパネル650kWなら80kg換算で52トン・当社計算)。500kW台の高圧の方は、実際の重さで確かめておくと安心です。
低圧1か所は届かない。でも、真ん中の段には入る
低圧1か所は、49.5kW×80kg=約4トンです(当社計算)。パネルを2倍載せていても約8トンで、50トンの案には届きません。ただ、仕組みは3段階です。売電していれば、低圧も住宅の屋根も真ん中の段に入ります(前掲 資料3 p.1)。

真ん中の段の「判断基準」(廃棄するときに何に取り組むかの国の基準)の中身は、12月初旬の第3回で議論される予定で、まだ分かりません。
費用の差も残ります。現状では、リサイクルは1kWあたり8,000〜12,000円、埋立は2,000円程度からです(前掲 資料1 p.2)。49.5kWなら約40〜59万円と、約10万円から(当社計算)。撤去工事の費用はたたむ場合の数字として別に見てください。
ここまでで分かったこと
- 線は50トンの案。625kW相当は換算で、実際の重さで前後する
- 低圧1か所は届かない見込み。売電していれば、判断基準と指導・助言の対象
- 法律は公布済み・施行前。線は事務局案で、委員の反応は未確認
約6割、2033年、分割──3つの読みどころ(当社の考察)
1つ目は、線の外に残る約6割です。多量の規制が捉えるのは2027〜2050年の排出の約4割で、残りは届出も勧告・命令もかからない範囲から出ます。一方で法律には、幅広い廃棄者への義務付けを検討して制度を見直す規定があります(前掲 資料1 p.1)。見直しが決まったわけではありません。ただ、いま低圧を買う方の出口は2030年代以降になることも多いはずです。そのときも同じ線とは限らない、と見ておくほうが無難です。
2つ目は、効き始める時期です。資料3 p.9のグラフを読むと、多量の割合は2031年まで1割に届かず、2033年に約3割へ上がります。50トン以上の見込み7,398者のうち、2013〜2015年に運転を始めたのは3,389者で45.8%(当社計算)。運転開始から20年とすると、FITが終わるのは2033〜2035年です。施行は2027年でも、この線に当たる廃棄の割合が大きく上がるのは2033年ごろからと読めます。運転開始の山と時期は重なりますが、資料は理由を書いていません。排出量そのものが顕著に増えるのは、2030年代後半以降とされています(前掲 資料1 p.2)。
3つ目は、分割廃棄です。案では、同じ発電所の一連の廃止や設備更新なら、分けて廃棄しても合計の重さで判断します(p.12)。故障や災害の交換、保守での少量の交換は、客観的な証拠があれば別扱いの案です。交換の記録は、値段の材料に加えて、この説明にも使える可能性があります。
低圧を何か所も持つ方の数え方は、資料に明記がありません。線は持っている量ではなく廃棄する重さで、見込みの者数も設備単位で数えられています(p.9〜10)。ただ、「管理主体の対象」「同一の発電所」は今後整理するとされており(p.12)、別々の発電所を同じ時期に廃棄するときの扱いは分かりません。
売り手・買い手・事業者に、どう効くか
| 立場 | 効き方(案が通った場合の見込み) | 確かめること |
|---|---|---|
| 売り手(低圧) | 1か所なら届出は届かない。費用の差と判断基準は残る | たたむ場合と売る場合の数字を並べる |
| 買い手 | 625kW相当以上は、出口の工程に届出と原則30日の待機が入る。一括の張り替えも合算の対象になり得る | 総重量と処分の見込みを収支に入れる。何か所も持つ場合の数え方は続報を見る |
| 事業者(解体・撤去・EPC) | 認定事業者ごとに、処理できる種類を明確にする案 | 11月中旬の第2回で認定基準を見る |
いまできること──総重量、見積の行、処理先
- パネルの総重量を出す。型番の仕様書にある1枚の重さ×枚数です。たとえば1枚18kg×300枚なら5.4トン(計算の例)。
- 出口の見積に、リサイクルの行を足す。処分を埋立とリサイクルの2行で出してもらうと、差が見えます。
- 両面ガラスなら、処理先を確かめる。今年度の国の調査に答えた処理事業者81社のうち、受け入れられるのは46社(56.8%)です(p.5)。2025年の出荷では両面ガラスが39.3%(回答17社の集計)で、張り替えた発電所は該当するかもしれません。
これから──次は11月中旬の第2回
第2回で認定と処理の基準、第3回で判断基準を議論し、意見公募を経て、2027年春頃に細かい決まり(政省令)が公布される予定です。予定は変わることもあります。

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参考資料
- 環境省「太陽光パネルのリサイクル制度について(太陽電池の種類・重量、多量の閾値等)」下位法令の策定等に係る検討会 第1回 資料3(2026年10月30日)
- 環境省「施行に向けたスケジュール(予定)」同 検討会 第1回 参考資料2(2026年10月30日)
- 環境省「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」の下位法令の策定等に係る検討会(第1回)会議ページ
- 環境省「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律について」合同会議 第11回 資料1(2026年10月)
- 環境省 報道発表「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律案の閣議決定について」(2026年4月3日)
- 太陽光パネル廃棄計画の「30日前届出」が義務に──法律は成立・公布、細かい線引きはこれから決まる(当社コラム)
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