令和8年度税制改正で創設された新税制を徹底解説。最大7%の税額控除か即時償却、どちらを選ぶべきか

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2025年12月26日、令和8年度(2026年度)税制改正大綱が閣議決定されました。「強い経済」の実現を掲げる今回の改正の目玉として、**「特定生産性向上設備等投資促進税制」**という新たな設備投資減税が創設されます。

「投資額5億円以上」「年平均投資利益率15%以上」という高いハードルを設定しながらも、全業種対象・建物も含むという過去にない広範な適用範囲を持つこの税制。果たして、日本企業の投資行動にどのような影響を与えるのでしょうか。

今回のポイント


なぜ今、「大胆な投資促進税制」なのか

国内投資135兆円目標への道筋

日本政府と経済界は2025年1月、「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」において、国内設備投資の目標を2030年度135兆円、2040年度200兆円と大幅に引き上げました(出典:首相官邸「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」 2025年1月27日)。

これは従来の115兆円(2027年度)目標を大きく上回る野心的な数字です。2023年度の国内設備投資は約101.8兆円と、バブル期(1991年度の102.7兆円)に迫る水準まで回復していますが、目標達成にはさらなる投資拡大が必要です。

大企業の投資は堅調も、先行き不透明感

日本政策投資銀行(DBJ)の調査によると、2025年度の大企業(全産業)の国内投資計画額は前年比14.3%増の22兆7,130億円となり、4年連続の増加が見込まれています(出典:日本政策投資銀行「2025年度設備投資計画調査」 2025年8月4日)。

製造業では半導体材料、電池素材、再生航空燃料(SAF)など脱炭素関連の投資が引き続き活発です。一方で、米国の関税政策をめぐる不透明感から、海外投資比率は低下傾向にあり、国内回帰の動きが鮮明になっています。

こうした環境下で、政府は「コストカット型経済」から「高付加価値創出型経済」への移行を加速させるため、従来の税制にはない「大胆な」優遇措置を講じることを決断しました。


新税制の全体像:何がどう変わるのか

制度の骨格

特定生産性向上設備等投資促進税制は、産業競争力強化法の改正を前提として創設されます。制度の主要ポイントは以下の通りです(出典:財務省「令和8年度税制改正大綱の概要」 2025年12月26日)。

適用要件

項目大企業中小企業者等
投資計画の合計額35億円以上5億円以上
年平均投資利益率15%以上見込み15%以上見込み
認定期限2029年3月31日まで同左
取得期限確認日から5年以内同左

優遇措置の内容

投資計画の確認を受けた法人は、対象設備の取得・事業供用時に、以下のいずれかを選択適用できます。

税額控除の上限は当期法人税額の20%となっており、控除しきれなかった部分については、一定の要件を満たす場合に最大3年間の繰越控除が認められます。

対象となる設備

対象資産は「生産等設備」を構成する減価償却資産です。本店建物や事務用器具備品、福利厚生施設などは対象外となります(出典:デロイト トーマツ「大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)」 2025年12月22日)。

具体的な最低取得価額は以下の通りです。

特筆すべきは建物が対象に含まれている点です。従来の投資減税では機械装置が中心でしたが、今回は工場や物流施設の新設・増設にも適用可能となります。


「投資利益率15%以上」という高いハードル

なぜ15%なのか

本税制の適用を受けるには、投資計画における年平均投資利益率が15%以上と見込まれることが必要です。この数字は、過去の類似制度と比較してもかなり高い水準に設定されています。

参考までに、中小企業経営強化税制のB類型(収益力強化設備)では年平均投資利益率5%以上が要件でした。今回の15%は、まさに「高付加価値」な投資のみを対象とするという政策意図の表れといえるでしょう。

投資利益率の計算方法

投資利益率の具体的な算定方法については、産業競争力強化法の改正を経て詳細が明らかになりますが、一般的には以下のような計算式が用いられると考えられます。

投資利益率 =(営業利益増加額 + 減価償却費増加額)÷ 設備投資額

たとえば、10億円の設備投資を行い、その結果として年間の営業利益が1億円、減価償却費が5,000万円増加する場合、投資利益率は15%となります。

この要件を満たすには、単なる設備更新ではなく、明確に生産性向上や収益力強化につながる「攻めの投資」が求められることになります。


即時償却と税額控除、どちらを選ぶべきか

両者の違いを整理する

新税制では、即時償却と税額控除のいずれかを選択できます。一見すると即時償却の方がインパクトが大きく見えますが、企業の状況によって最適解は異なります。

即時償却のメリット

即時償却のデメリット

税額控除のメリット

税額控除のデメリット

シミュレーション例

たとえば、中小企業が5億円の設備投資を行った場合を考えてみましょう。

税額控除を選択した場合

即時償却を選択した場合

資金繰りを重視する企業や、投資年度に大きな利益が見込まれる企業は即時償却、安定した利益が継続する企業は税額控除が有利になるケースが多いといえます。


大企業が注意すべき「賃上げ要件」

適用除外となるケース

大企業(適用除外事業者に該当する中小企業者を含む)については、以下の条件に該当する事業年度において本税制の適用が除外される点に注意が必要です(出典:EY税理士法人「令和8年度税制改正大綱(詳細版)」 2026年1月21日)。

適用除外となる事業年度の要件

所得の金額が前期を超える事業年度において、以下のいずれにも該当しない場合

  1. 継続雇用者給与等支給額 ≧ 継続雇用者比較給与等支給額 × 101%
  2. 国内設備投資額 ≧ 当期の減価償却費総額 × 一定割合

※資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上、または従業員2,000人超の企業は、賃上げ要件が102%に引き上げ

つまり、利益が増加している年度においては、一定の賃上げか設備投資の増加を行わなければ、本税制のメリットを享受できません。政府の「賃上げと投資の好循環」を促す意図が明確に表れています。


他の税制との関係:併用できない制度に要注意

投資計画期間中は他制度の適用不可

特定生産性向上設備等投資促進税制の確認を受けた法人は、その投資計画の期間中、以下の制度による特別償却・税額控除の適用を受けることができません。

したがって、複数の投資プロジェクトを並行して進めている企業は、どの税制を適用するかを中長期的な視点で検討する必要があります。特に、新税制の投資利益率15%という要件を満たせないプロジェクトについては、従来の中小企業経営強化税制等を活用する方が有利となるケースもあるでしょう。


企業が今から準備すべきこと

申請に向けたロードマップ

本税制の適用を受けるには、以下のステップが必要となります。

  1. 投資計画の策定:年平均投資利益率15%以上を見込める事業計画を立案
  2. 取締役会等での意思決定:適切な機関による決議が要件
  3. 経済産業大臣への確認申請:2029年3月31日までに確認を受ける
  4. 設備の取得・事業供用:確認日から5年以内に実施
  5. 税務申告時の適用:所定の書類を添付して申告

産業競争力強化法の改正法施行後に詳細な手続きが明らかになりますが、大規模投資の計画には相応の時間がかかります。2026年度に投資を検討している企業は、早期に準備を開始することが推奨されます。

税理士・会計士との連携

投資利益率の算定方法や即時償却と税額控除の選択判断には、専門的な知識が必要です。また、他の税制との適用関係を見極めるためにも、顧問税理士や公認会計士との早期の相談が重要となります。


まとめ:日本の設備投資は新たなステージへ

特定生産性向上設備等投資促進税制の創設は、日本政府が「強い経済」の実現に向けて本気で取り組んでいることの表れです。

全業種対象、建物も含む幅広い適用範囲は、製造業だけでなく、物流、小売、サービス業など多様な産業にとって活用の可能性を開くものです。一方で、投資利益率15%以上という要件は、単なる更新投資ではなく、真に生産性向上に資する「攻めの投資」を求めるものといえます。

2030年度135兆円、2040年度200兆円という国内投資目標の達成に向けて、今回の税制改正がどこまで企業の投資行動を後押しするのか。その真価が問われるのは、これからです。


参考資料


※この記事はWriters-hub様のご協力により生成AIでリサーチ、生成した記事を元に編集しました。
記事内容の詳細については参考資料をご覧ください。