みなさん、日本の再生可能エネルギー市場が、ついに2兆円の大台を突破したことをご存知ですか?
富士経済の最新調査によると、2025年度の国内再生可能エネルギー市場は2兆28億円に達し、その約5割を太陽光発電が占めることが明らかになりました(出典:富士経済「再生可能エネルギー関連の国内市場を調査」)。さらに驚くべきは、2040年度には2兆9,070億円まで拡大するという予測です。
これは単なる数字の増加ではありません。日本のエネルギー構造が、まさに今、歴史的な転換点を迎えているのです。
今回のポイント
- 太陽光発電が市場の約5割を占める主導的役割
- FIT制度の革新的改革による投資障壁の劇的な低下
- ペロブスカイト太陽電池という日本発のゲームチェンジャー
なぜ太陽光発電が市場の主役なのか
2025年度の再生可能エネルギー市場において、太陽光発電が約5割という圧倒的なシェアを占める背景には、複数の要因が絡み合っています。
まず、電気料金の高騰です。2022年以降のエネルギー価格上昇により、自家消費型の太陽光発電の経済性が飛躍的に向上しました。企業や家庭にとって、もはや太陽光発電は「環境に良いから」ではなく「経済的に有利だから」導入する時代になったのです(出典:富士経済「2023年版 太陽電池関連技術・市場の現状と将来展望」)。
さらに、第三者所有モデル(PPAモデル)の普及も見逃せません。初期投資ゼロで太陽光発電を導入できるこのモデルは、2023年度に前年度比35.0%増の551億円、2040年度には2022年度比10.4倍の4,224億円まで拡大すると予測されています(出典:日本経済新聞「富士経済、太陽電池と関連ビジネスの市場の調査結果を発表」)。
FIT制度大転換の真の狙い:「投資回収4年」という衝撃
しかし、本当に注目すべきは、2025年10月から始まる「初期投資支援スキーム」です。
住宅用太陽光発電の買取価格が最初の4年間24円/kWh(従来比60%増)に設定されることで、投資回収期間が従来の10年から4年に短縮されます(出典:経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2025年度以降の買取価格等と2025年度の賦課金単価を設定します」)。
これは単なる補助金政策ではありません。政府は2030年までに新築住宅の60%に太陽光設置を義務付ける方針を掲げており、この目標達成への切り札として位置付けているのです。
興味深いのは、高い買取価格の期間を短縮することで、再エネ賦課金の増加を抑えつつ普及を促進するという巧妙な制度設計です。国民負担を最小限に抑えながら、最大の効果を狙う――これが今回の制度改革の真の狙いなのです。
ペロブスカイト太陽電池が変える未来の風景
そして今、日本発の革新的技術が世界を変えようとしています。
2025年4月に開幕した大阪・関西万博では、国内最大規模のペロブスカイト太陽電池が西ゲート交通ターミナルのバス停屋根250メートルに設置されました(出典:日経xTECH「万博に国内最大『ペロブスカイト太陽電池』施設、バス停屋根250mに積水化学が設置」)。
従来の太陽電池の10分の1の重さ、曲面にも設置可能な柔軟性、そして日本が世界第2位の産出量を誇るヨウ素を主原料とする――まさに日本のために生まれたような技術です(出典:SDGs MAGAZINE「”日本の切り札”を大阪万博で披露!次世代太陽光発電『ペロブスカイト太陽電池』」)。
積水化学工業は2025年度中に事業を開始し、2027年度には100メガワット(約3万1,000世帯分)の生産体制を構築する計画です。パナソニックは「発電するガラス」として、ビルの窓をそのまま発電装置に変える技術を開発中です(出典:パナソニック「ガラス型ペロブスカイト太陽電池の可能性を追求したプロトタイプを大阪・関西万博パナソニックグループパビリオンに展示」)。
2040年への道筋:課題と可能性
第7次エネルギー基本計画では、2040年度に再生可能エネルギーを初めて最大電源(4-5割)と位置付けました(出典:経済産業省「第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました」)。
しかし、富士経済の予測では、太陽光発電の発電量は計画の下限値を下回る可能性があります。理由は、人員不足による施工能力の限界と適地の減少です。一方で、洋上風力発電は2030年度前後に数百MW規模の大型プロジェクトが複数運転開始予定で、市場の3割を占めるまでに成長すると予測されています。
この矛盾をどう解決するか?答えは「質の転換」にあります。平地への設置から屋根・壁面への展開、シリコン太陽電池からペロブスカイト太陽電池への移行――量的拡大から質的深化への転換が、日本の再生可能エネルギーの未来を決めるのです。
今、私たちにできること
再生可能エネルギー市場の2兆円突破は、単なる通過点に過ぎません。真の脱炭素社会実現には、一人ひとりの行動が不可欠です。
企業の方へ
- 2025年10月からの初期投資支援スキームを活用した屋根設置太陽光の検討
- PPAモデルによる初期投資ゼロでの導入検討
- ペロブスカイト太陽電池の実証実験への参加
個人の方へ
- 住宅用太陽光発電の買取価格増額(24円/kWh)を活用した導入検討
- 蓄電池とセットでの自家消費システムの構築
- 地域の再エネ電力プランへの切り替え
まとめ
2兆円市場の実現は、日本のエネルギー転換が「理想」から「現実」へと移行したことを示しています。太陽光発電が主導し、FIT制度改革が後押しし、ペロブスカイト太陽電池が未来を切り開く――この三位一体の戦略が、2040年の脱炭素社会を現実のものとするでしょう。
今こそ、再生可能エネルギーへの投資は「コスト」ではなく「未来への投資」だと認識を改める時です。2兆円市場は始まりに過ぎません。本当の変革は、これから始まるのです。
参考資料
パナソニック「ガラス型ペロブスカイト太陽電池の可能性を追求したプロトタイプを大阪・関西万博パナソニックグループパビリオンに展示」 (2025年2月14日)
富士経済「再生可能エネルギー関連の国内市場を調査」 (2025年7月30日)
経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2025年度以降の買取価格等と2025年度の賦課金単価を設定します」 (2025年3月21日)
経済産業省「第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました」 (2025年2月18日)
日経xTECH「万博に国内最大『ペロブスカイト太陽電池』施設、バス停屋根250mに積水化学が設置」 (2025年1月6日)
SDGs MAGAZINE「”日本の切り札”を大阪万博で披露!次世代太陽光発電『ペロブスカイト太陽電池』」 (2024年12月10日)
